異形の館
No.003 KATO
BAROQUE(以下「バロック」)は妄想を楽しむゲームである。 ゲーム開始時点において主人公は一切の記憶を失っており、ただ罪の意識があるだけ、という状態におかれている。 これはいわゆる「自分探し型」のゲームの一類型でありテーマとしてはごくごくありふれたものなのだが、他のゲームと違うところは最後の最後までプレイヤーに与える情報を絞り込み、結局のトコロ「正解」を与えることなくゲームクリアに至らせている点である。 バロックというゲームにはサブタイトルとして「歪んだ妄想」という言葉が付されているが、これはゲーム中に流れているストーリーの主要なテーマであるとともに、バロックというゲームの本質をも言い表している言葉である。 プレイヤーはあまりにも少ない情報に最初は戸惑い、困惑し、場合によっては当惑してゲーム自体に「つまらない」という烙印を押してしまう。 しかし、情報の欠落した部分を自らの想像力(妄想)で補い、手探りでプレイを続けることができる人は、何度も何度も繰り返しプレイしてゆく中でその情報の欠落部分が補われ、あるいは、新たな妄想へと発展し、あたかもパズルのピースが正しく組み合わされていくかのごとく、いつしかこの作品の世界観を理解できるようになる。 妄想により情報の欠落部分を補うことは、あたかも自分がその世界をつくり出しているかのような感覚をもたらす場合がある。 これを「その人のバロック」と呼ぶ。 基本となる世界観を共有しつつ、それぞれが、それぞれ独自の妄想により補完された世界を完成してゆく。 それがバロックというゲームの一番の魅力であり、多くのユーザーがバロックの世界に魅入られる理由であろう。 前置きが長くなった。そろそろ異形の話に移るとしよう。
【KATOの想い出】 カトーはカトウと言う名のサラリーマンが歪んで異形になったという設定らしいが、ネーミングとその容姿から「ドリフターズ」の加藤茶を想像した人もいたのではないかと思う。いや、いたはずだ。いてくれ! 少なくとも私はそう思った。 禿げ上がった頭頂部は加藤茶がコントの中で演じてみせる「(古き良き時代の)ダメおやじ」のヅラ(カツラ)を想像させたし、グルーを吐き出すところは加藤茶お得意のギャグ、「へーっくし!」と「カトちゃんぺ!」を合体させたイメージだなと一人で勝手に納得していたものである。 あと、KATOとアルファベットで書くと英語では「ケイトウ」と発音するんだけど、この場合はその昔、かのブルースリーがアメリカのTVドラマ「グリーンホーネット」の中で演じた役柄と同じ名前になるなあ、とか思ったりもした。 ※ たぶんカトーのデザインやイメージとは全然関係ないだろうけど…。 ま、それはさておき… カトーは比較的初期の段階から出現する異形だが、プレイ開始当初はかなり手こずった異形のひとつである。油断しているとゴロゴロ転がってきてグルーを吐き出し、物理攻撃をし、場合によっては毒攻撃なんかもしかけてくる。さらに言えば 集団で現れてボコボコにタコ殴りされる ケースもあるので装備が貧弱な場合は用心するに越したことはない。自慢じゃないが私は通路の途中でカトーさんの大群に出くわし、戻ろうとしたら後ろにもうようよいて、あれよあれよと思う暇もなくやられてしまった経験がある。 いくらか経験を積んで装備もそれなりになってくると何ということもない相手なのだが、油断は大敵である。 ちなみにカトーは前方しか見えないので後ろから近づいて攻撃すると効果的だそうである。(バロックワールドガイダンスにそう書いてあった)
何だかんだ言ってもカトーは好きな異形である。デザイン的にも好きだしネーミングもいい。サイズにもよるが手のひらサイズのカトーがいたら水槽の中で飼ってみたい気がする今日この頃である。 エサは…何を食うのかよくわからないが、元サラリーマンだから朝は喫茶のモーニングセット、昼は社内食堂のメニューから適当にランチなど選んでやればいいだろう。 夜には残業食として出前のてんやもの。ビールも1本つけてやろうか。 酒類は好んで飲むだろうがあまりたくさん与えると愚痴(グルー)だらけになりそうなので後片付けが大変かな。ほどほどにしておこう。 ときおり水槽から出して遊んでやるのもいいかも知れないが、タタミの上でグルーを吐かれると後で探して潰すのが大変なので段ボール箱で囲った「運動場」を用意してそこを走らせるようにしよう。 くるくる回転しながらきれいに走る様は見ていても飽きが来ない。時折頭を出そうとしていびつな回転になり、コースをはずれるのも楽しい。 6つも頭があるのだがそれぞれに性格があって反応が違うので名前も別々に付けてやらねばならない。うちでは便宜上、 ヒラ ・ カチョー ・ カカリチョー ・ ブチョー ・ ジチョー ・ シャチョー と呼ぶことにしようか。何?シャチョーとかは役員だからサラリーマンじゃないって? フッ。 最近は役員と言いながら経営者としての意識も資質もない輩が多いから別にそれでいいんだよ。 さて、妄想もこれくらいにしておかないと後がコワイからな。「あなたの文章を読みました。私の飼っているカトーとレースをさせたいのですがよろしいでしょうか?」なんて問い合わせが来ないとも限らない。 何事もほどほどが一番。 それでは、また。 (2000/10/07) |
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