異形の館

異形とは…

簡単に言えばBAROQUEの世界に出てくるモンスターのことである。

異形と書くと一般的には「イギョウ」と読むのだが、BAROQUEにおいては「イケイ」と読むのが正しい。

その奇怪な容姿形態はそれだけでひとつの世界観を構成しうるパワーを有しており、BAROQUEの世界観を形作る様々な要素の中でも特に重要な役割を果たしていることは説明を要しないだろう。

ここはそんな異形に魂を奪われてしまった者達の集う館である。

 

No,001 MOON (2000/08/29)
No,002 GURYU (2000/09/23)
No,003 KATO (2000/10/07)
No,004 GRILO (2000/10/29)
No,005 BULLGULL (2000/11/05)
No,006 SEVENTEEN (2000/11/26)

2001/08/15

No.007 SOCONPO

 

BAROQUE(以下「バロック」)で一番印象に残っているシーンは何かと問われたら、私はプレイ開始直後の「うおおおおん」という悲しげな鳴き声の聞こえてくる外界のシーンだと答えることにしている。

もちろんバロックには色々な名シーン名セリフがあり、他にもいろいろと好きなシーンを挙げろと言われればいくつか候補は出てくるのだが、それらを比較検討してベストシーンを選出せよと言われると、どの候補も決定打に欠けており、いくら考えても結局は同じ結論にたどり着くことになる。

外界のシーン。

それは何度も繰り返される「始まり」の象徴である。そして、何も知らないプレイヤーがはじめてバロックの世界に触れ、歪み始める場面でもある。

あの音、あの映像…。

すべてはここからはじまった…。

感慨深げに画面を見ているとどんどんVTが減ってゆきやがて死に至る。そしてそこからまた何か新しい世界がはじまってゆく。

終わりのない世界への入り口。

- The Gate of Never Ending Story -

この門をくぐって僕は、いや、僕たちはバロックを知った。

僕は僕であり、僕たちでもある。そして今この文章を読んでいるあなたも多分僕なのだ。

バロックを知ることで僕たちはひとつになった。多くの意識がひとつの融合点を見い出し、あるいはまた、その融合点に見いだされてひとつになった。

幾層ものフロアは意識の階層。心の階層。

僕たちはみんなで協力しながらその階層をひとつひとつ丹念に調べ、理解し、そして自らの心の階層へと呑み込んでいった。

最下層には何があるのか?

最下層の下にも世界はあるのか?

バロックというゲームはそれには答えずただ微笑むだけである。エンディングもアイテムリストもシーンリストもコンプリートした。しかしそれでも埋まらないものがあることに気づいた時、このゲームの持つ本当の意味が見えてくるのである。

 

【SOCONPOの想い出】

私は異形が好きだ。その容姿といい醜い歪み具合といい、非常に興味深いものがあるし、何よりも愛らしい。

もちろん異形はプレイヤーにとっては憎むべき敵役である。己の力量を知ることもなくただただ本能の命ずるままに攻撃を仕掛けてくる愚かな行為に腹が立たないわけでもないが、私はそんな異形の愚行をも含め、できるだけ寛容にその存在自体を受けとめてやりたいのである。

ただ、理想と現実とが必ずしも一致しないのは世の常で、中には私の寛容性と異形に対する愛をもってしても、なお看過することのできない異形たちもいる。

それは私の大事なアイテムを盗むグリロと、私の大事なアイテムを劣化させるソコンポである。

特にソコンポは許し難い。

グリロにアイテムを盗まれた場合はそのフロア内で追いつめてぶっ倒せば盗まれたものを取り戻すことが出来るが、ソコンポに劣化させられたアイテムはソコンポを倒しても元には戻らない。

幾多の労力と天から与えられた運を使って必死の思いで「攻防の液」などのアイテムをゲットし、地道にコツコツとレベルアップをはかってきた、その過程がソコンポのただひと吐きの劣化液によって否定され、踏みにじられてしまうのである。

私は私自身が直接攻撃を受けても、毒を吹きかけられても、欲情させられても、脱力させられても、暗闇の状態におかれても、何ら意に介すことはない。

なぜなら私の肉体はモリブデン鋼よりも硬く鋭くしかも軽やかにしなやかに保たれており、そんじょそこいらの異形どもの攻撃など蚊が刺したほどにも感じられないからだ。

私に噛みつこうとした異形はその歯を折られ、血だらけになった口元を大きく開けたまま苦悶の表情を浮かべ、悶絶する。

私に殴りかかろうとした異形は奇妙な方向にへし折れた己の腕を一瞬の間不思議そうに眺め、そしてワンテンポ置いてから何が起こったのかを知り、恐怖に自我を喰われながら暴走し自滅する。

私に体当たりをしようとした異形は、私に近づくこともできないまま私との間にある「障壁」に自ら吸い込まれて異空へと旅立ってゆく。

しかし、ソコンポは他の異形と同様、私に物理的な回転攻撃を仕掛けながらも、実は、その本心では、私の大事な武器や防具にどろどろした汚物を吐きかけ、劣化させることで私に精神的なダメージを与えることを狙っているのである。

卑怯なり。

私自身に対し堂々と直接攻撃を仕掛けるならいざ知らず、私のかわいい武器どもや防具どもに狼藉をはたらくとは、言語道断!

その罪、許し難し!

かくてソコンポは浄化される。自らの汚物にまみれて自らを劣化させながらナメクジのように溶けてなくなってゆくのだ。

もちろん攻撃に武器など使わない。

ソコンポに出会うと私は一切の武器防具をその場に投げ捨て、己の拳と肉体ひとつで浄化を果たすのである。

ソコンポは苦し紛れにぐるぐる回ってその回転力で私になにがしかのダメージを与えようと試みるが、滑稽意外の何物でもない。

そんな攻撃が俺にきくか!

そう叫んでボコボコのタコ殴りにしてやるのだが、たまにいいパンチをもらったりすることもある。弘法も筆の誤り。猿も木から落ちる。ってヤツだ。

この間も久しぶりにバロックをプレイしていてソコンポに出会い、楽勝だとタカをくくって勝負を挑んだら、4連続も顔面にパンチをくらわされてさすがの俺ももうダメかと思ってしまった。

どうやら俺がしばらくプレイしていないうちに異形は異形でじっくりと俺の手の内を研究していたらしい。

ヒットアンドアウェイのような責めては引くなんてチマチマした戦法などはとりたくないのだが、勘が戻るまでは仕方がない。

かくて今度は往年のモハメド・アリのように華麗なヒットアンドアウェイでソコンポをフロアの床に沈めはじめる。

蝶のように舞い、蜂のように刺す

神経塔という名のリングで私は幾多のソコンポを葬り去ってきた。そして今日もまた、私の大事なアイテムにちょっかいを出そうとしたソコンポを華麗なフットワークとボクシングテクニックによりノックアウトするのである。

そして最後にひとこと、こう言ってそのフロアを去るのだ。

「あばよ」

そしてしばしば私は真っ青になる。

ソコンポとの闘いの際に外して床に置いた大事な武器防具を拾わないまま下の階へ降りてきてしまったことに気づいて…。

うおおおん、うおおおん

嘆いてみても

覆水盆に返らず

馬鹿は何度も死ななきゃなおらない…。

(2001/08/15)

(c)STING (http://www.sting.co.jp/)


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