異形の館

No.005 BULLGULL

 

BAROQUE(以下「バロック」)についてここで色々と述べることはほとんどがゲームの画面から受けた印象を元に私の脳内で熟成されたインスピレーションをそのまま文字面に書き起こしているだけのシロモノである。

本来、私はゲームをプレイする際に説明書の類は一切読まないし、いわゆる攻略本の類も一切買わない主義である。

どころか、ゲームそのものを楽しむために、私は一切の前宣伝、プレビュー記事その他そのゲームの内容に関する情報(BBSの書き込みなども含む)から、できるだけ距離をおくようにしている。

そのゲームを先入観なしに、自分の判断で選び、自分の感覚でプレイし楽しみたい。

そしてその結果、そのゲームに対する自分なりの正しい評価ができあがってくる過程をじっくりと楽しみ、味わいたいのである。

もちろんそうは言っても説明書や攻略本がないとゲームの進め方がわからなくなるような作品も多いので、その場合はまず説明書だけを見る。

それでもまだゲームの進行に不足があるような駄作の場合は説明書をなめるように隅々まで読みたおした後、速攻で攻略本を買いに走って有無を言わさず一気にコンプリートしてしまう。

ちなみに、攻略本があっても進まないようなゲームはその時点でジ・エンドである。(中古屋に売るのも世の為にならないので通常はゴミ箱行き)

いささか自分勝手なゲーム評価方法だとは思うが、今までのところその結果については世間的な評価ともそうかけ離れていないので、あながち間違った方法であるとも思えない。

ただ、自分だけでそのゲームを楽しむのではなく、他の人間にもそのゲームの良さを理解して欲しいと思うようになったとき、私は少し今までとは違うアプローチを行うようになった。

他人様に自分の思いを伝え、理解してもらうためには、ゲームそのものの内容のみで全てをわかったような気になるのは危険である。

情報があふれかえっている現代社会においては、それだけでは自分と他人とが共有するものが少なすぎて会話そのものがが成り立たないのだ。

そこで私はバロックに関して色々な情報を集めはじめた。書籍、WEBサイト、BBS…その他モロモロの情報源。

毎日のようにいろんな情報源を渡り歩き、尋ね歩いたあげく、疲れ果てた記憶の中で誰かが「違う」と叫んでいることに気がついた。

そして悟ったのだ。

馬鹿なことをしてしまった

ということを…。

バロックは妄想を楽しむゲームである。「正確な」情報を集めてこのようなファンサイトに掲示したところで誰がどんな妄想を楽しめるというのだ!?

私は集めかけた情報を再び脳内から解き放った。そして失われた情報は私の妄想で補うことにした。

そうだ。これこそが私の目指していたものだったのだ。

バロックの面白さは「歪み」の面白さである。人それぞれその歪み方は違っていて当たり前だし、その違いを楽しむのがバロックの醍醐味なのである。それを、あやうく伝えられなくなるところだった。

あぶない、あぶない。

まだまだ私も修行が足りないようだ。

バロックというゲームの1ファンとして…

そして…

 

 

背中に黒き偽翼を持つ者として…。

 

 

 

フッ。戯れ言が長くなった。そろそろ本題に移るとしよう。

 

 

【BULLGULLの想い出】

ブルガーについて語る前にまたまた英語のスペルの話。スティングのWEBサイトではサターン版、PS英語版のページ、ともに「BULLGULL」で統一がとれているなと喜んでいたら、PS英語版のページのメニューだけがいかにも英語っぽく「BULLGER」と表記されていた。あちゃー!

どーでもいいと言えばどうでもいいコトなのだが、バロックシューティングが海外でも好評だというウワサなので、本編であるバロックの国際化を望む者として海外のユーザーにも最初は「正しい」知識を植え付けておきたいなあ、と、まあ…それだけの話である。

#中国語や韓国語で表記するとどうなるのか興味深いトコロではあるが

さて、ブルガーの想い出。いろいろあるんだけどまずは戦闘時の話にしようかな。

ブルガーのおばちゃんは浅い階層で出てくる時は緑色なので私は親しみをこめて「緑のおばちゃん」あるいは「ミドリちゃん」と呼んでいた。

私の目の錯覚かも知れないが、ブルガーには大きいのと小さいのと2種類あるような気がしたので大きい方を「緑のおばちゃん」小さい方を「ミドリちゃん」と呼び分けるようにしていたのである。

ブルガーはトントントンと跳ねてから勢いをつけて一気に体当たりしてくるので、私は跳ね始めたらそそくさと逃げることにしていた。

装備が不十分な場合は結構ダメージも受けるし、異形になってしまったとはいえレディーに剣を向けるのはエセフェミニストの肩書きしか持たない私であっても何だか気がひけるため、まずは戦闘を回避して逃げることを考えたのである。

ただ、レディにあるまじき行為を行った際には容赦なく切りかかることにしていた。

そう、 放屁 である。

別にレディだから放屁をしてはいけないというワケではない。どんどんしてもらっても構わない。(と言うのも何だか語弊があるが…)

要は、臭すぎて目の前が真っ暗になるほどの放屁をすることが問題なのだ!(違う違う)

というか、臭いのは別に構わないのだが(というとまたまた語弊があるような気もするが…)わざとこちらに尻を向けて放屁をするというその態度が許せないのである!

それもフザけたことに、自分の放屁でロケットのように飛び去ってゆくという人を小馬鹿にしたようなパフォーマンスまで披露するのである!

いくら温厚でジェントルマンな性格の私であってもそんな無礼な態度をとられることには我慢がならない!

私のプライドにかけて、そんな失礼な異形は決して許しておくわけにはゆかないのである!

このフーセンババアが!

普段の上品で高潔な私の口からは決してこのような言葉が漏れ出ることはない。決してない。断じてない!

そして私は狂気にかられた形相でフーセンババア…じゃなくて、ブルガーを追い回し始める!

ブルガーは動作が鈍いので追いつくのは簡単だ。私はひとこと、こう言って剣でメッタ斬りにする。

テメエラ、人間じゃあねえ!
(異形だっつーの)

たたっ斬ってやる!
(萬屋錦之介調)

我に返った時にはもはやその階にブルガーはいない。全滅だ。そして私は苦悩する。ああ、またやってしまったと反省するも後の祭り。

ブルガーよ、オマエが憎くてやったんじゃないんだ。

そう。放屁さえしなければ、あんなフザけた態度さえとらなければ、ブルガーは決して嫌いなタイプの異形ではない。

おとなしくしてウツラウツラと寝ている様子など結構カワイイところもある。

ブルガーは元々はどこにでもいる典型的なおばちゃんだったのだろう。恥じらいを忘れて人前でも平気で放屁をし、ガハハハと笑って見せる豪快なおばちゃん。

口からは稼ぎの悪いとーちゃんに対するいやみやご近所の奥さん連中の間で交わされる陰険な悪口が四六時中垂れ流され、そのあまりの毒々しさゆえに、歪んで異形となった際に口元をガスマスクのようなものでふさがれ、自らの中にその毒を巡回させるような形に変容させられてしまったのだと思われる。

頭の髪の毛には目がついている。バーゲンセールの売場では誰よりも早くお買い得商品を見つけ、日々送られてくるスーパーのチラシにも鋭く目を光らせ、レジペーパーに打ち間違いがないかを目ざとくチェックする。

傍目には醜い行為と映るその姿は、実際にはすべて家族のために一生懸命自分のできることをしている尊い姿なのだ。

隣の奥さんが買ったものが気になって窓からこっそりのぞき見をする。主人の浮気も気にしていないふりをしてきっちりチェックする。主人のへそくりもしっかり見つけて自分の口座に貯金する。子供が悪さをしていないか勉強しているかもチェックする。目をつけておかねばならないところはゴマンとある。

目をはいくつあっても足りないのだ。

そして最後には女らしさをアピールすることも忘れない。異形になってもアクセサリーを手離せないのはおばちゃんにもまだ残っていた女心の現れだろう。

ブルガーはBULLGULLと表記する。日本人的な感覚ではブル・ガルと読めないこともない。

そこから想起されるのは飼い主そっくりのブルドッグを連れている太ったおばちゃん。ブルドーザーのような巨大な体躯で周囲の障害物をなぎ倒しながら歩く太ったおばちゃん。

そんなイメージの結集した言葉でなのであろうか。

ブルガーはよくも悪くもおばちゃんである。口は悪いが心根は優しい肝っ玉かあちゃんなのである。

時に眉をひそめたくなるような態度や行動をとることもあるが、たまには大目にみてやろう。

次に出会った時は、屁くらいは許してやるか。

そんな偽善的な思いなど実際のプレイ画面では消し飛んでしまい、狂気の笑みを浮かべながらげしげしと剣を振り上げてしまうであろう自分の性格を知りつつも、ちょっと気持ちに変化の見られる今日この頃なのでありました。

(2000/11/05)

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